2011年7月3日日曜日

ポジティブ意識とネガティブ意識(2)

前向きに積極的に考えている意識(やる気になっているポジティブ思考)のことが、ポジティブ意識やポジティブな存在ではないということです。同じく、後向きに消極的に考えている意識(落ち込んだネガティブ思考)のことが、ネガティブ意識やネガティブな存在ではないのです。
ではここでいう「ポジティブ思考とネガティブ思考」の意味とは違う、「ポジティブ意識とネガティブ意識」とは、人の持つどんな意識状態のことを指して言っているのでしょうか。

少し突き詰めてポジティブ意識(ポジティブな存在)とネガティブ意識(ネガティブな存在)について、この意識が何を指しているのか、どんな意識状態なのか、深く考えてみることにしました。ポジティブ思考という場合と、どこか似ているように思えるところもあり、突き詰めて深く考察してみないと、ポジティブ意識と言う場合のポジティブが何を意味しているのか、その違いがよく理解できないのです。
しばらく、いろいろと考えた結果として、次第に分ってきたことがあります。
それは、ポジティブ意識とネガティブ意識とか言っていることは、次のような意識のことを意味しているのだな、ということです。


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・ポジティブ意識(利他的な他者愛の意識)
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私もあなたも同じ存在であり、自分と他者の区別はなくなり、等しく大切な存在として感じられる意識状態である。他者に対しても、自分がしてほしいと思うことをしてあげられる意識である。
ここから、大いなるものと統一されているという意識状態が生まれ、自分は他者を含むすべて(宇宙とも)と一体と感じられる意識状態が生まれてくる。
すべてと一体と感じられるので、孤独感はなくなり、一体感、安心感、平等感、さらに気分の高揚感が感じられる。

他者も自分も本質は同じであるから、自分も、自分以外のすべての他者も、同等の大切な存在として扱う。他者も自分と同等な存在であるから、他者を支配し、利用しようとしない。他者を支配し利用しようとしないから、他者の自由意志を尊重し、他者を操作(コントロール)しようとしない。
自分も他者も同じであるから、他者より自分の方が価値があるというような優越感はない。

ポジティブ意識の者は、自分にとって自分自身が大切なように、他者も自分と同様に大切に思えるため、他者への奉仕者になる。
ポジティブ意識の者は、自分も愛し、同様に他者を愛することのできる意識状態である(他者愛の意識)。

ポジティブ意識を別の言葉で言い換えると、(すべてとの、他者との)統合意識、(すべてとの、人類との)全体意識、(人類との、他者との)一体意識、(他者との)平等意識、(全体への、人類への)他者奉仕意識、利他的意識、というような名称となる。

大いなるものと統一されたという意識状態になると、これはインド哲学の代表であるヴェーダンタ哲学でいうところの、梵我一如(ぼんがいちにょ)に近い意識状態ということになる。
梵我一如とは、宇宙に遍満している宇宙意識(ブラフマン、「梵、大我」と訳される)と、個人個人の持つ個別意識(アートマン、「我、個我、真我」と訳される)が、本来は同一のもの、一体の同じものと感じられる意識状態のことである。

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・ネガティブ意識(利己的な自己愛の意識)
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私とあなたは別の存在であり、自分と他者の区別は厳然と存在していると感じられる意識状態である。他者に対しては、利用価値があれば自分の考えに合うように支配し、他者を利用しようとする意識である。
ここからは、大いなるものと統一されているという意識状態は生まれず、すべてと一体とは感じられないので、自分は他者とは分離しているという意識状態が生まれてくる。
他者を含むすべて(宇宙とも)と一体とは感じられないので、孤独感、不安感、他者に対する優越感、他者を支配したいという支配欲を持っている。

他者は自分と同様ではないのだから、自分の考えに合うように、他者を支配し、利用しようとする。他者を支配し利用しようとするから、他者の自由意志を尊重せず、他者を操作(コントロール)しようとする。
自分は特別な存在であり、他者より自分の方が価値があるというような優越感が感じられる。

ネガティブ意識の者は、何より自分を愛し大切であるため、自己中心的となり、自己(自分自身)への奉仕者、利己主義者になる。
(他者への奉仕者にはならないが、偽善的な見せ掛けの行動は取ることがある)。
ネガティブ意識の者は、何より自分を強く愛している意識状態である(自己愛の意識)。何より自分を強く愛しているので、自己中心的であり、利己的である。

ネガティブ意識を別の言葉で言い換えると、(すべてとの、全体との、他者との)分離意識、(選ばれた特別な存在である、他者より優れているという)優越意識、(他者を支配したいという)支配意識、(優越した自分への)自己奉仕意識、利己的意識、というような名称となる。

どこまで行っても、自分と他者は別の存在であるので、大切なのは何より自分である。対象範囲を広げても大事なのは、自分の家族や考えに合う者たちだけである。自分以外のすべての他者を、自分と同等の大切な存在として扱うことはない。
基本的に利己主義者は、ネガティブ意識といえるが、ネガティブ意識という言葉には単なる利己主義者という以上の意味がある。利己主義者は自分と家族のような者だけが大切であり、自分が良ければ良い、自分に関係する者だけが良ければ良いという考えを持っている。

ネガティブ意識の者は、何より自分を愛しているので、自己中心的、利己的であるだけでなく、自分の考えに合うように、他者を支配し、操作しよう、利用しようとする意識を持つ。
他者の持つ自由意志は尊重しないが、そのことに罪悪感は持っておらず、選ばれた自分の権利であり、大儀のためには当然のことであるとすら考えている。

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このような意識の分類は、普段、普通の人があまり考えない考え方です。事前に説明がないと、考えたことがない人には、ポジティブ意識といっても、すぐには何を指すのか、なかなか理解できないかも知れません。
ポジティブ意識という言葉と、普段よく聞くポジティブ思考とは、言葉が似ているため混同しやすいのです。ポジティブ思考でのポジティブと似ていますが、違う意味を指しています。日常的な意味でのポジティブやネガティブとは、ここで使っている意味は異なった意味合いとして使われています。


普通はポジティブな人とか、ポジティブな存在という場合は、いつも明るく振舞っている、積極的で前向きに考える人のことを指します。同じようにポジティブな意識というのも、いつも明るく振舞い、積極的で前向きに考える人の意識のことだろうと思ってしまうのです。
ここでのポジティブな意識というのは、いつも明るく振舞っている、積極的で前向きに考える人のことではなく、他者も自分と同じとみる、他者への愛を持てる利他的な、他者と一体となった意識状態です。とはいえ純粋なポジティブ意識を持続できれば、心の中に、すべてと一体という安心感が生じてきますから、次第にポジティブな気持ちが強くなってはきます。

反対にネガティブな意識というのは、いつも暗く沈んだ感じを与える、消極的で後向きに考える人のことではなく、他者は自分とは違うとみる、何より自己を愛する利己的な、他者と分離された意識状態です。
ネガティブ意識の人も、見た目は明るく振舞うこともでき、積極的で前向きなポジティブ思考は持てます。ネガティブ意識の人の、前向きで積極的な姿勢やその熱意の中には、他者への温かみはなく、利己的であり、ときには悪意のようなものも混じるかもしれません。
ネガティブ意識の人も、何より大事な自分のために、前向きで積極的な心構えで行動できます。しかしながら、何より自分が大事であるため、彼らは他者の自由意志を尊重せず、他者を利用するために操作(コントロール)しようします。その理由の一つは、他者との一体感や同一感は感じられないため、自分にとっては価値のない他者を、自分の利益になるように支配し利用したい思いがあるからです。


成功者と呼ばれる人の中にも、ネガティブな意識状態のままの者もいます。彼らは、他者とは分離されていると感じるネガティブな意識の者ですが、ネガティブ思考は持っておらず、ポジティブ思考で行動します。そのために、立居振る舞いに人間的な魅力さえ感じさせることができます。
こういうネガティブ意識の人たちの特徴の一つは、振る舞いに人間的な魅力があろうと、考え方の中心は自己中心的、利己的であり、他者のことを顧みないということがあげられます。ネガティブ意識の人は、他者を含むすべての存在から分離していると感じられるで、他者を支配したい、自分の利益に合うように利用したい、思いどおりに動かしたいという感覚を持っています。

ネガティブ意識の者は、基本的に自己中心的であるため、独善的な傾向もあり、自分のやる事はいつも正しいと思い勝ちになります。通常は、ネガティブ意識の人は、自分のことをネガティブな意識であると思うことすらないでしょう。ネガティブ意識の人が、自分で自分の意識が、ネガティブな意識状態(利己的な分離意識)であることに気づくことは難しいのです。


ネガティブ意識では、他者のこうむる迷惑や感情につては、自分とは関係ないことなので、自分の意識の中には登ってこないのです。他者の心の痛み(自分が同じ事をされたらどう感じるか)など、ネガティブ意識では想像することも共感することもできません。他者の心の痛みには、自分だったらどう思うかというようなことには、まったく無頓着です。そういう意味では、ネガティブ意識の者は、人の心が分らない人でもあります。
自分と他者とは厳然として区別されていますから、ネガティブ意識の人にとっては、他者のことを気にかける必要性はありません。ネガティブ意識にとっては、自分と関係ない他者が、どうなろうと知ったことではないのです。

ネガティブ意識の者(ネガティブな存在)でも、実際的な行動という点ではポジティブ思考の塊かも知れません。ただしネガティブな意識状態の者は、自己中心的な利己的な自分の成功を目指しています。

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